白壁荘だより 天城百話

池波正太郎 「天城峠」


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天城峠を舞台にした小説と言うと、まず出てくるのが川端康成の「伊豆の踊子」、
松本清張の「天城越え」、井上靖の「しろばんば」などが有名ですが、
「天城越え」より一年早く『昭和31年)池波正太郎が「天城峠」(昭和31年)
を書いています。

劇団の裏方で働く主人公と、若い俳優が天城を越える物語。
池波正太郎は、鬼平犯科帳や真田太平記など時代小説の
イメージが強いですが、この「天城峠」は時代小説に入っていく前の作品の一つ。

軽快なタッチで車窓から湯ヶ島の景色が描かれています。

~三島から駿豆鉄道に乗り換え修善寺から下田行きのバスに乗り、
沿道の季節はずれで客もない温泉場をいくつも抜け、森閑として、
のびやかな伊豆の村々を揺られて湯ヶ島を越すと━━おだやかな
起伏を見せた山肌を背景に、梅が咲き、春の休暇中で子供の笑い声に
満ちたている街道の田園風景は何時の間にか車窓にせまる山肌と森林に変わり、
狩野川に沿った道は、ゆるやかに曲がりくねってのぼりはじめた。~ 

池波正太郎 「より天城峠」
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by shirakabes | 2010-03-20 00:18 | 文学